事件の概要

シャネル社は1954年8月27日にフランスで設立された世界的な高級品ブランドです。同社は、第25類の衣料品、靴、帽子、マフラー、水着などについて、図形商標および文字商標「CHANEL」の権利を有しています。

広州凱旋大酒店有限公司傘下の華美達酒店は、1階西廊下の2号店舗を文大香氏に賃貸し、衣料品と皮革製品の販売に使用する旨の契約を締結しました。契約には、模倣品や粗悪品を販売しないという約束が含まれていました。

シャネル社は、文氏が販売する靴、財布などに同社の登録商標と同一の標章が使用されているとして、文氏、広州凱旋大酒店有限公司および華美達酒店を提訴しました。侵害行為の停止と、経済的損失および合理的な費用として計30万元の連帯賠償を求めました。

裁判所の判断

第一審の広州市越秀区裁判所は、文氏の商標権侵害を認め、侵害の停止と損害賠償を命じました。一方、ホテル側の2者については責任を認めませんでした。

シャネル社は控訴しました。第二審の広州知的財産裁判所は、商標の知名度、高級ホテルという位置づけ、契約に示されたホテルと店舗との関係、および長期間にわたり繰り返された侵害行為を考慮しました。その結果、ホテルは当該店舗に対して高い注意義務を負い、少し注意を払えば明白な模倣品販売を発見できたと判断しました。

ホテルが侵害を見て見ぬふりをして放置した行為は、侵害の幇助に当たります。控訴審は原判決を変更し、文氏とホテル側の2者に対し、経済的損失および合理的な費用として計5万元を連帯して賠償するよう命じました。

判決の意義

衣料品市場やホテル内の貸店舗で模倣品が販売される事件では、商標権者が店舗経営者、賃貸者および管理者を併せて提訴し、連帯責任を求めることがあります。そのため、賃貸者や管理者の責任の判断が重要になります。

本件では、賃貸者が侵害を知っていたか、または知るべきであったかを判断するに当たり、商標の知名度、侵害の明白さ、および賃貸者と店舗経営者との関係が考慮されました。具体的な事情に応じて注意義務を定めた本判決は、侵害の幇助に関する責任と著名ブランドの保護について指針を示しています。

本件は、2015年に最高人民法院が公表した北京・上海・広州の知的財産裁判所の代表的事例に含まれています。