2009年1月13日、安徽封壇酒業販売有限公司(2010年 6月8日前に、社名は安徽好美思酒業販売有限公司であった)は中国商標局に「好美思HERMES及び図」(以下、本件商標ともいう)の商標出願(出願番号: 7163694)を行った。本件商標に係る指定商品は33類の「蒸留アルコール飲料、ビターズ、アニゼットなど」である。

(本件商標) (エルメス社の保有商標) 本件商標が初歩査定され公告された後に、フランスのエルメス・インターナショナル社(以下、エルメス社という)は法定期限内に中国商標局に異議申立をした。商標局は審査により本件商標「好美思 HERMES及び図」の登録を許可した。エルメス社は商標局の決定を不服として、2012年6月1日に商標評審委員会(日本の審判部に相当)に異議申立不服審判を請求した。

異議申立不服審判

【エルメス社による主要な理由】

エルメス社はバック、服装の指定商品において登録された「HERMES」商標が著名商標の要件を満たすとして、関連証拠を提出した。商標「好美思HERMES及び図」はエルメス社の著名商標を模倣したものであり、当該商標の登録が消費者に商品の誤認混同を招きやすく、エルメス社の利益を損害することになる。また、本件商標の登録出願について悪意を持って、エルメス社の先行商号権を損害した。

【審決】

2013年12月2日、商標評審委員会は「好美思HERMES及び図」の商標登録を認めた。

エルメス社は上記審決を不服として、北京第一中級裁判所に訴訟を提起したが、同裁判所は、「好美思HERMES及び図」がエルメス社の先行商号権を侵害しておらず、中国商標法に規定された「不良な影響」もないとし、エルメス社の訴訟請求を棄却した。エルメス社は、北京第一中級裁判所の判決を不服として、北京高等裁判所に控訴を提起した。

二審(最終審)

【裁判官の見解】

本件商標「好美思HERMES及び図」とエルメス社の「HERM ES及び図」は全体的な視覚効果においては差が顕著であり、同じ「HERMES」の部分を有するだけでは、本件商標がエルメス社の「HERMES及び図」を剽窃し、模倣したと判断することができない。たとえ「HERMES及び図」が以前、服装やバッグの商品において著名商標と認定されたとしても、本件商標「好美思HERMES及び図」は関連公衆の誤認混同を招きエルメス社の利益を損害することはない。

また、商号としての「HERMES」を服装、バッグの商標経営活動中に使用して一定的な知名度を有するとしても、商標「好美思HERMES及び図」はその指定商品である酒と服装やバッグとの相違が大きく、さらに「HERMES」商号との相違も大きい。したがって、関連公衆は両者の間に何らかの関係が存在しているとの誤認混同を招くことはない。本件商標はエルメス社の先行商号権を損害していない。

なお、中国商標法10条1項(8)号に規定された「その他の不良な影響」とは、商標ロゴ自体が、中国の政治、経済、文化等の公共秩序と公共利益を損害したことをいう。本件商標「好美思HERMES及び図」は上記の不良な影響を有しない。

【裁判官の判断】

北京高裁はエルメス社の控訴を却下し、本件商標「好美思 HERMES及び図」の登録有効を維持した。

【コメント】

著名商標の跨類保護(すなわち、商標の商品分類をまたがって保護)の範囲の限定について、希釈化防止と混同防止の二つの標準がある。希釈化防止標準については、訴えられた行為の商標に対する識別性の低下を重点とする。混同防止標準については、訴えられた行為が関連公衆に誤認混同させるかどうかを重点とする。著名商標の跨類保護は境界がないわけではない。

本事件において、裁判所は、エルメス社の著名商標の跨類保護の主張を支持してないのは、混同防止の標準を適用することで認定したからである。本件商標「好美思HERMES及び図」とエルメス社の「HERMES及び図」との指定商品においては相違が大きいため、消費者に誤認混同を生じさせない。

――蘇州大学法学院副教授李楊

(注)審決および判決の事件番号は下記のとおりである。

二審:(2016)京行終2504号一審:(2014)一中行(知)初字第5948号商標評審委員会:商評字〔2013〕第127659号

ソース:http://ip.people.com.cn/n1/2016/0923/c136655-28735490.html

図:エルメス社は「好美思HERMES及び図」商標事件において敗訴
図:エルメス社は「好美思HERMES及び図」商標事件において敗訴
図:エルメス社は「好美思HERMES及び図」商標事件において敗訴
図:エルメス社は「好美思HERMES及び図」商標事件において敗訴