1.「不使用取消」の法的根拠

中国商標法49条に、「登録商標が使用許可された商品の通用名となり、又は正当な理由なく継続して3年間使用しなかったときは、如何なる事業体又は個人も、商標局に当該登録商標の取消を請求することができる」と規定されています。通常、正当な理由なく継続して3年間使用しなかったことを理由として登録商標の取消を請求することは「不使用取消請求」と呼ばれます。

2.「不使用取消」手続きの見直し

不使用取消請求は、主に出願人が自社の商標登録を実現するために、登録上の障壁となる既存権利を除去する目的で活用されます。具体的には、以下のような場合が挙げられます。

(1)商標出願前の調査において、自社商標と競合する可能性のある先行商標を発見した場合、出願人は当該先行商標に対して不使用取消請求を提起することができます。

(2)商標出願後、他人の登録商標との類似を理由に拒絶査定を受けた場合、拒絶査定不服審判の請求と併せて、当該先行商標に対する不使用取消請求を提起することができます。

いずれの場合でも、先行商標の取消が確定すれば、自社の商標出願は登録される可能性が高まります。

長年にわたり、拒絶査定後の審判請求と不使用取消請求を同時に提出した案件において、「不使用取消」審理の期間が拒絶査定不服審判よりも長く、また商標局が不使用取消の審理結果を待つべきとの規定がなかったため、多くの不服審判案件が「不使用取消」案件より先に審理を終了していました。この時点ではまだ引証商標が有効な状態であったため、拒絶された商標は登録が認められず、結果として不使用取消請求は登録上の障壁となる既存権利を除去する役割を果たさないばかりか、手続の空転とリソースの浪費を招いていました。

この実務上の問題を解決するため、2023年6月に商標局は『審判案件中止情形規範』を公布し、拒絶査定不服審判案件において、引用商標の権利状態が裁判所の審理中または行政機関の処理中の他案件の結果を待つ必要があり、かつ請求人が明示的に審理中止の請求をした場合は、不服審判案件は審理中止すべきであり、中止事由が消滅した後に審理を再開すると明確に規定されています。これは、不服審判手続きが不使用取消請求の結果が出た後に実体審理を行うことができることを意味し、不使用取消請求は真に登録上の障壁となる既存権利を除去する役割を発揮できることとなりました。

『審判案件中止情形規範』の施行後、不使用取消請求の件数が大幅に増加し、その中には悪意のある取消行為も少なくなく、商標登録者は対応に追われ、商標局の審査効率も低下していました。こうした悪意のある取消行為を規制するため、2025年、商標局は不使用取消請求に対し新たな要件を追加しました。

3.不使用取消請求の新たな要件

従来と比較し、不使用取消請求は以下の点で変更されました。

(1)請求人の立証責任の強化

従来は「登録商標が継続して3年間使用されていない」事実を証明するための簡単な証拠(例えば、検索エンジン(百度など)での数ページ分のスクリーンショット)の提出で足りました。現在では、商標局は請求人に対し、「登録商標が継続して3年間使用されていない」事実を証明するための予備的な調査証拠の提出を求めており、これを満たさない場合は補正または却下のリスクがあります。

(2)請求人への証拠要件の厳格化

従来は証拠の内容や件数に厳格な規定がなく、簡単な証拠を提出するだけで十分でした。現在では、説得力のある予備的な調査証拠の提出が求められ、これには以下が含まれます。

・商標登録者の経営範囲または業務範囲

・経営状態または存続状態に関する情報

・登録商標の市場調査状況

関連する調査は、専門的な調査プラットフォームに限定されず、商標登録者の公式ウェブサイト、WeChat 公式アカウント、ECプラットフォーム、実店舗や生産施設などを含むネットワーク調査、市場調査、実地調査などによる証拠資料が対象となります。ネット調査による証拠については、3つ以上のプラットフォーム (百度、淘宝、WeChatなど)での検索証拠を提出することが求められ、各プラットフォームではホームページから5ページ目まで連続した完全なスクリーンショットを提供する必要があります。

(3)証拠の真正性に関する承諾書

新しい要件では、請求人及び代理人は、申告事項及び資料の真正性に関する承諾書に署名し、提出した証拠の真正性について法的責任を負うこととされています。虚偽の資料を提供した場合、信用上の制裁や行政処分の対象となる可能性があります。

(4)「不使用取消」関連案件の状況開示

新しい要件では、不使用取消請求人と取消対象商標との間には、商標の先取り出願や拒絶査定など、何らかの関連性が存在しなければならないと規定されています。請求人は、「不使用取消」の請求時に、関連案件の出願番号や状態等関連する情報を説明する必要があります。

4.不使用取消請求に関する提言

要するに、現在、不使用取消請求のハードルは高く、難易度とコストも上昇しています。請求人は、不使用取消請求を行う前に予備調査を実施すべきです。明らかな商標使用の痕跡が確認された場合、または調査証拠に基づいて商標が使用されている可能性が高いと判断される場合には、不使用取消請求の提出はお勧めしません。

また、「不使用取消」の新要件には依然として不明確な点が残されており、実務上でも多くの問題に直面します。例えば、外国の登録者の経営や存続状態は簡単には入手できない場合があり、ネット調査で見つかった商標の使用状況が実際の使用実態とは限らず、どのような場合に実地調査を実施すべきかなどが明確ではありません。請求人が提出した予備調査報告が要件を満たさない場合、商標局が補正通知を発行しますので、請求人は、最初に適格な調査報告書を作成できない場合、補正通知を受領後、修正と追加提出を行うことができます。