中国最高裁判所は、知的財産権侵害事件における懲罰的損害賠償に関する新たな司法解釈である「知的財産権侵害民事紛争事件の審理における懲罰的損害賠償の適用に関する最高裁判所の解釈」(以下「解釈」)を公布し、2026年5月1日より施行しました。
(1)適用要件の明確化
「解釈」は、懲罰的損害賠償の適用要件である「故意+ 情状重大」の認定ルートをさらに具体化し、全体的な予見可能性を高めています。
例えば、侵害通知を受領した後も侵害行為を継続した場合、商業提携又はライセンスに関する接触歴がある場合、重複侵害がある場合などは、「故意」と認定されやすくなります。また、重複侵害、証拠隠匿、侵害を業として行う行為などは、「情状重大」として明確に列挙されています。
これにより、裁判基準はより明確となり、適用結果の予見可能性も向上しました。
(2)損害賠償計算制度の体系化
「解釈」は、損害賠償の計算メカニズムを明確化しました。算定基礎は、以下のいずれかに基づいて確定されなければなりません。
·実際の損失
·侵害による利益
·ライセンス料の倍数
また、法定損害賠償を算定基礎とすることは明確に排除されています。算定基礎を立証できない場合、懲罰的損害賠償請求は認められません。倍率については、裁判所は1倍から5倍まで(整数でない倍率を含む)の範囲で決定することができます。
最終的な賠償額は、
「算定基礎×倍率+合理的な権利行使費用」
によって構成されます。
これにより、損害賠償額の算定可能性は高まりましたが、立証要件も大幅に強化されました。
(3)立証責任の強化
「解釈」は、立証及び情報開示の仕組みを強化しました。原告が初歩的な立証を完了した後、裁判所は被告に対し、侵害行為に関連する帳簿、資料等の提出を命じることができます。被告が提出を拒否した場合、又は虚偽情報を提出した場合、裁判所は原告の主張及び事件記録上の証拠に基づき、懲罰的損害賠償の算定基礎を認定することができます。
また、同一の侵害行為について、すでに行政罰又は刑事罰が科され、その執行が完了している場合、裁判所は倍率を決定する際にこれを考慮しなければなりません。
その結果、コンプライアンス記録が不足している企業や情報開示を拒否する企業は、敗訴リスク及び高額賠償リスクに直面する可能性が高まります。

