1. 問題の所在

中国特許審査指南第2部第4章は、進歩性の評価に当たり、1つ又は複数の先行技術文献に開示された異なる技術的内容を組み合わせて、請求された発明を評価できると定めている。この原則に基づき、審査官は少なくとも1つの引用文献と技術常識を組み合わせて進歩性を評価することが多い。

出願人と審査官との争点は、1つ又は複数の技術的特徴が技術常識に該当するかどうかに集中しやすい。出願人は、審査官がその特徴を技術常識とする証拠を示していないことを理由に反論することが多い。しかし、この方法だけでは十分な効果が得られないことも多い。関連法令は、この場合の立証責任を審査官が負うことを明確に定めておらず、技術常識に基づく進歩性の指摘への対応は難しい問題となっている。

2. 分析

特許審査指南でいう技術常識には、最も近い先行技術に照らして改めて特定された技術的課題を解決するための当該分野の慣用手段や、教科書・参考書などに開示された技術的手段が含まれる。したがって、解決すべき課題と、その特徴が慣用手段又はこれらの文献に記載された手段であるかが、重要な判断要素となる。

審査官が技術常識を用いて進歩性を評価する場合、出願人は次の方法を検討できる。

2.1 実際の技術常識を具体的に示す

出願人は、関連分野の技術常識に含まれる具体的な手段を示し、問題となる特徴との相違を説明できる。単に技術常識であることを否定するのではなく、その分野で実際に技術常識とされる内容を見つけ、審査官に提示する方法である。

具体的には、改めて特定された課題に関し、当該分野の権威ある教科書や参考書を調査し、その課題を解決するために記載された手段を特定する。そして、それこそが当該分野の技術常識であることを説明する。さらに、その手段と請求項中の特徴を比較し、技術的実現方法の違いと、後者が前者に対してもたらす技術的効果を詳細に分析することにより、問題となる特徴が技術常識とは異なることを示す。

引用文献や当該分野の他の刊行物に、通常はその特徴を用いて当該課題を解決しないことを示す記載があれば、より説得力のある反論となる。

2.2 技術的効果を用いて説明する

問題となる特徴の技術的効果に基づいて、それが技術常識に該当しないことを説明することもできる。中国特許法の下では、技術的効果は進歩性を裏付ける重要な証拠となる。予測できない技術的効果は、技術的解決手段の進歩性を支持する根拠となり得る。

出願人は明細書の内容に基づき、その特徴が課題解決に果たす役割は当業者にとって容易に想到できず、直接生じる効果も予測できないことを説明できる。

すなわち、出願書類を読む前の当業者は、その特徴が別の効果を有することを知っていたとしても、改めて特定された課題の解決に利用して本願の効果を得ることまでは想到できない場合がある。この場合、その特徴がもたらす性能又は利点は当業者の予測を超え、その課題を解決するための使用は技術常識とはいえない。

対応する技術的効果が明細書に明記されていない場合には、その特徴を請求項の構成から取り除くという仮定を検討できる。残りの特徴では完全な技術的解決手段を構成できず、又は課題を解決できないのであれば、当該特徴が請求された組合せ全体に大きく貢献することを示せる。

さらに、当業者は出願書類を読んで初めて、その特徴が対応する技術的効果をもたらすと理解できる、と主張することもできる。これは、その効果が当該分野で通常得られるものではないことを裏付ける。顕著な貢献とこのような効果を持つ特徴は、技術常識とは区別できる。

2.3 他の技術的特徴との相互作用を分析する

独立請求項であっても従属請求項であっても、各特徴は孤立したものではなく、互いに作用し影響を及ぼす全体を構成している。ある特徴だけを見れば通常の選択に見えても、他の特徴との相互作用により課題を解決し、単独の場合とは異なる効果を生じるのであれば、その組合せでの使用は技術常識の定義に当てはまらない可能性がある。

例えば、中国特許出願03121391.Xの独立請求項は、マルチギガビット・イーサネット端末をサポートする光電多重化方法に関し、次の工程を含む。

(a)ライン診断機能及びポート多重化機能を有する物理層の特定用途向け集積回路を用い、各ユーザーリンクに、ギガビット電気インターフェースに対応するユーザーポートと、ギガビット光インターフェースに対応するユーザーポートを設ける。

(b)2つのポートのリンク状態を示すリアルタイム検出信号に基づいてアクティブなポートを決定し、それを有効ポートに設定し、そのポートを使用してユーザーリンクのデータを送信する。

審査官は2つの文献を引用し、文献に開示されていない「決定されたアクティブなユーザーポートを有効ポートに設定する」という特徴が、当該分野の技術常識に当たると判断した。

出願人は、その特徴単独の貢献は目立たないものの、技術的解決手段全体において基礎的な役割を果たしており、技術常識ではないと考えた。そこで、他の請求項の特徴との相互作用に基づき反論した。

アクティブなポートを有効ポートに設定することの直接の効果は、そのポートがデータを送信できるようにすることである。しかし、請求項1の他の特徴と組み合わせると、各ポートのリンク状態に応じて、有効な電気又は光インターフェースがユーザーデータを送信する。これにより、インターフェースモジュールを交換せずに、イーサネットポートが両方のインターフェースをサポートできる。また、光電切替時には有効なインターフェースを切り替えるだけでよく、ユーザーリンクを中断する必要がない。

この組合せでは、両方のインターフェースをサポートし、光電切替に伴うリンクの中断を避けるという効果が得られる。これらは、その特徴単独から直接得られる効果ではない。したがって、請求された解決手段の中でアクティブなユーザーポートを有効ポートに設定することは技術常識ではない、との主張がなされた。審査官は最終的にこの応答を受け入れた。

3. まとめ

相違する特徴が技術常識であるとの理由で進歩性が否定された場合、応答では必然的にその特徴の機能や技術的効果を論じることになる。出願書類の作成時に、各特徴が全体の中で果たす役割、単独での効果及び組合せによる効果を詳しく記載しておくことが、後の審査意見への応答に有用な根拠となる。