中国では、国家知識産権局(SIPO)が意匠出願について実体審査を行わず、初歩審査を経て登録する。このため登録後の権利が不安定となる場合があり、無効審判や訴訟の増加にもつながっている。適切な権利行使のため、特許法、審査指南及び当所の実務経験に基づき、出願時の留意点を紹介する。
1. 意匠調査
調査はリスクを抑える有効な手段であり、特に次の2点を確認する。
(1)その意匠が、出願日(優先権を主張する場合は優先日)前に国内外で公然知られた先行意匠に該当するか。これは新規性要件である。
(2)出願日前に他人が取得した合法的権利に抵触するか。中国法に基づき享有され、その意匠の出願日に有効な権利・利益であり、商標権、著作権、企業名称権、肖像権、著名商品の特有の包装又は装飾を使用する権益などを含む。
実務では、許諾なく他人の登録商標や著作物を自己の意匠の全部又は一部に取り入れる事例が少なくない。
2. 併合出願
原則は1意匠1出願である。ただし、第3次改正後の特許法第31条第2項は、同一製品の2つ以上の類似意匠と、セット製品の意匠について併合出願を認めている。これらは1件の出願として扱われ、出願料も1件分となる。
2.1 類似意匠
同一製品に係る意匠でなければならない。各意匠を指定された基本意匠と個別に比較し、同一又は類似の設計特徴を持ち、違いが局部の細かな変更、その製品に通常用いられる設計、設計単位の繰返し、又は単なる色彩の変更にとどまる場合、類似すると判断される。
したがって、設計思想を最もよく表す意匠を基本意匠に指定すると、他の意匠との差を小さくできる。
同一設計者の複数の類似意匠を別々に出願すると、二重特許の問題が生じる可能性がある。併合出願はこの問題を避ける手段となる。別々に出願した後、第三者から二重特許を理由に無効審判を請求されると、1つの意匠権しか維持できない場合がある。
2.2 セット製品
同じ大分類に属し、共通の設計思想を持つ2つ以上の独立した製品で構成される。各製品に独立した使用価値があり、その組合せにも使用価値がある。コーヒーカップ、コーヒーポット、ミルクポット、シュガーポットからなるコーヒー器具などが例となる。
セット製品の出願には、1つ又は複数の構成製品に係る2つ以上の類似意匠を含めてはならない。
3. 部品と製品全体の関係
無効判断における全体観察・総合判断の原則を踏まえると、個々の部品について出願することが適切な場合がある。設計の特徴が部品自体にあるなら、その部品を一つの完成した製品として出願し、部品を含む装置全体の出願としないことを検討する。
図1は、脊椎手術用のロッド整復装置に用いられるプッシャを示す。この装置は、椎骨に取り付けられたアンカーの受け部へロッドを押し込むために使用される。図2と図3は、プッシャを含む装置の2つの実施例である。
出願人は当初、両実施例の意匠を出願することを希望していた。しかし、いずれも設計の特徴は図1のプッシャにある。2つの装置全体は類似意匠の要件を満たさず、併合出願できない。一方、別々に出願すると保護範囲が限定される。そこで、図1のプッシャ自体について意匠出願することを提案した。



4. 簡単な説明
中国では、意匠の簡単な説明が必須の出願書類である。他の制度では必ずしも同様ではなく、例えば欧州連合では出願時にこの説明を要求していない。
説明は、図面や写真だけでは正確に表せない内容を補足するものである。製品の名称、用途、設計の要点を含み、その要点を最もよく示す図面又は写真を1枚指定する。
(1)製品の用途は、特に多用途の製品について分類を決めるために用いられる。
(2)設計の要点は説明の重要な部分であり、先行意匠との主な相違を示す。新しい意匠は、既存の設計の一部を含むとともに、先行意匠と同一でも類似でもない内容を含むことが多い。後者が創作上の貢献を表す。要点の説明により、閲覧者は先行意匠との違い及び革新的な部分を理解しやすくなる。
中国の実務では、出願時に示された設計の要点は侵害判断の参考となり、対応する出願記録は、訴訟においてその要点を認定する証拠となり得る。



