1. 均等侵害の概念について
特許権侵害判断における均等侵害は、文言侵害(literal infringement)と対応するものである。特許権の保護範囲は、特許請求の範囲に記載された内容に基づく。被疑侵害製品または方法に係る発明の技術的特徴が文言上同じ意味で、特許請求の範囲に記載された全ての技術的特徴をカバーする場合、文言侵害を構成することになる。被疑侵害製品または方法に係る発明の1つまたは複数の技術的特徴と、特許請求の範囲に記載された対応の技術的特徴とが、文言上の意味が同じではないが、構成が均等になる場合にも、特許権侵害が成立する。これがいわゆる均等侵害(doctrine of equivalents)である。
2.中国における均等侵害の関連規定について
中国法には均等侵害は明確に規定されていないが、司法実務では、すでに均等侵害に関する判例がある。
2001年の中国最高裁判所の「特許紛争案件審理に適用される法律の若干の問題に関する規定」で初めて均等侵害が明確に規定された。この司法解釈の第17条に「特許法第56条第1項にいう『発明又は実用新案の特許権の保護範囲は、その権利請求の内容を基準とし、説明書と図面は権利請求の解釈に用いることができる』とは、特許権の保護範囲は、権利請求書に明確に記載された必須の技術的特徴によって確定された範囲を基準とし、その必須の技術的特徴と均等な特徴で確定される範囲も含むものとする」と規定されている。また、「均等な特徴とは、記載された技術的特徴と基本的に同一の手段で、基本的に同一の機能を実現し、基本的に同一の効果を達成するもので、且つ当業者が創造的作業なしに容易に想到できる特徴を指す」 とも明確に規定されている。
その後、最高裁判所の「特許権侵害をめぐる紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」(2009)も、均等論に関する規定を含んでおり、例えば第5条の「明細書若しくは図面のみにおいて記述され、請求項においては記載されていない技術案について、特許権侵害をめぐる紛争案件の際に権利者がそれを特許権の保護範囲に取り入れる場合、裁判所はこれを支持しない」という規定も均等侵害の判断に適用される。禁反言の原則が均等侵害の判断に及ぼす制限は、第6条に明確に規定されている。
均等論について、北京市高級人民法院が公布した「特許権侵害判断の若干の問題に対する意見(試行)」(2001年)により具体的な規定がある。
「均等物の置換には、クレームにおける具体的な技術的特徴に対する置換が含まれ、前提部分の技術的特徴の置換も含まれる。」(第35条)が初めて明確にされており、「権利侵害の判断に均等論を適用するにあたっては、被疑侵害製品(又は方法)の具体的な技術的特徴が、特許の独立クレームの対応する必須の技術的特徴と均等か否かに応じて適用され、被疑侵害製品(又は方法)の全体的技術案と独立クレームに定義されている技術案が均等か否かには適用されない。」(第38条)が具体的に規定されている。2001年の北京高級人民法院の意見は、不完全実施や構成の省略、改悪実施にも言及していた。ただし、2009年の最高人民法院司法解釈第7条は、請求項の全ての技術的特徴を対比することを要求する。一つ以上の特徴を欠く場合、又は同一でも均等でもない特徴がある場合は保護範囲に入らない。したがって、全体的な構想が類似することだけを理由に、省略又は改悪された構成を均等侵害と認定することはできない。
最高裁判所の上記の解釈は、主に米国の均等侵害認定に関する規則を参照したものである。これらの司法解釈により、均等侵害は被疑侵害の技術案が全体で特許の技術案と同じではなく、対応する技術的特徴が均等になる場合に認められることとなる。
北京市高級裁判所の「特許権侵害判断の若干の問題に対する意見(試行)」の第37条には、均等の判断時点については、侵害行為発生日を基準として採用すると規定されている。
2001年の北京市高級人民法院の意見第44条は、均等論と禁反言の適用が相反する場合、禁反言を優先すると定めている。
最高裁判所の均等侵害に関する規則は、日本の裁判所の均等侵害に関する認定規則を参照していない。日本の裁判所では、均等侵害を認めるための第1要件として、被疑侵害品(又は方法)と請求項の記載との異なる部分が特許発明の本質的部分でないことを挙げている。
一方、中国の司法実務では、特許発明の本質的部分の技術的特徴でも、特許発明の非本質的部分の技術的特徴でも、均等侵害を認める他の条件を満たした場合、対応する技術的特徴の構成が同一又は均等であれば、均等侵害が成立すると判断することができる。この点は日本の裁判所の均等侵害に関する規定と異なる点である。
2009年司法解釈:https://www.court.gov.cn/fabu/xiangqing/1.html


