商号権とは、すなわち企業の名称権であり、工業所有権の一種とされ、登記済みの自分の商号(企業の称号) について他人に妨げられることのない使用権をいう。事業主体は法律により一定の地域内で商号(すなわち事業の名称)の独占使用権を持っている。中国の法律では、商号権についての明確な規定はないが、「民法通則」、「不正競争法」、「企業名称登録管理規定」及び「商標法」等に関連する規定が散見される。
2001年改正商標法第31条(2013年改正法では第32条)により、商標登録の出願は他人の既存権利を侵害してはならないことが規定される。この既存権利には商号権が含まれる。
「商標審査及び審理標準」の規定によれば、他人が先に登記して使用し、かつ一定の知名度を有する商号と同一又はほぼ同一である文字の商標を出願し、中国の関連公衆の混同を招きやすく、既存の商号権者の利益を侵害する場合、他人の既存の商号権に対する侵害と認定される。
1.既存の商号権が他の商標権に対抗するための要件
(1)商号の登記日、使用日が、他の商標の登録出願日より前であること
商号権を先に有していた事実は、外国企業は当該商号を使用した商品取引文書、広告宣伝資料等によって証明できる。
(2)商号が中国の関連公衆の間において一定の知名度を有すること
既存の商号が関連公衆の間において知名度を有していることの認定は、商号の登記時期、当該商号を使用した経営活動の期間、地域範囲、経営業績、広告宣伝状況等の面から考察される。
(3)他の商標が登録され使用されると、関連公衆に混同を生じさせやすく、既存の商号権の利益が侵害されるおそれがあること
上記の「混同」とは、他の商標を登録して使用すると、当該商標によって示される商品/役務の出所が商号権者であり、または商号権者との間に事業関係や許諾など特定の関係があると誤認されるおそれがあることを言う。
他の商標と既存の商号権との混同を招きやすく、既存の商号権者の利益を侵害するおそれがあると認定するにあたっては、次の各種の要素を勘案しなければならない。
①既存の商号の独創性商号に使用されている文字がよくある語句ではなく、確かな意味のない造語である場合、独創性があると認定することができる。
②既存の商号の知名度
③係争商標の指定商品/役務と、商号権者が提供する商品/役務とが、原則として同一又は類似していること
2.商号権が異なる類似群に拡大
原則的に、既存の商号権の保護に対して同一又は類似する商品のみに限られる。しかし、現代においては企業発展の多様化が見られ、とりわけ大企業では領域、業種の枠を越えて事業展開が進められている。よって、既存の商号の知名度が高く、他の商標が既存の商号と非常に近似し、出願人の主観的な悪意があきらかである場合、既存の商号権の保護に同一又は類似する商品だけでなく、関連性が強く、関連公衆に混同をしやすく、商号権者の利益を損なう商品/役務まで適宜範囲を拡大することができる。
3.企業の略称も商号権の保護対象?
下記を証明できる証拠がある場合、企業の略称も商号権の保護対象となりうる。
①企業の略称が長期的かつ広範に使用され、関連公衆に熟知して認められている
②関連領域において高い市場知名度を有し、経営主体の商業標識を識別する意義が生じている


