今回の審査基準の改正で、「補足実験データの提出について」の部分が改正されました。主な改正点として、「出願日以降に補足提出された実施例や実験データは考慮しないものとする」という記載が「出願日以降に補足提出された実験データに関し、審査官は審査しなければならない。補足実験データが証明する技術的効果は、当業者が特許出願の公開内容から得られるものでなければならない」に改正されました。

改正前の「出願日以降に補足提出された実施例や実験データは考慮しないものとする」に対して、改正後は「審査官は審査しなければならない」と明確な規定に変わっており、この字面から見ると、かなり大きな改正が行われたようですが、実際には審査への影響は大きくありません。

具体的な特許審査実務においては、通常、次の「1.」および「2.」の2つの点に直面する際に、出願人は実験データの補足提出をする可能性があります。以下、この2つの点から今回の改正による実務上の影響を分析します。

1)進歩性について審査基準について上記の改正がされる以前、実務的には、進歩性の拒絶理由に対する応答を行う際に、補足実験データ(特に、引用文献と対比するための実験データ)の審査を受けることができました。引用文献に対して、予想できない技術的効果を有することを証明できれば、審査官はこれらの対比データを考慮した上で、その進歩性に対する反論を受け入れる可能性もありました。

今回の審査基準の改正後においても、このような実験データについての審査の原則は変わりません。審査官は補足実験データを審査し、確かにその技術的効果を証明できる場合、受け入れることができます。ここで改正前でも、改正後であっても、「補足実験データが証明する技術的効果は、当業者が特許出願の公開内容から得られるものでなければならない」という要求があることに注意してください。改正後の表現ではこの点が明確にされています。これは先願主義を満たすための要求であり、後から補足提出された実験データは出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面と内在的な関係があるべきで、つまり、その技術的効果は出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面から得られるものでなければなりません。

2)実施可能要件、サポート要件について改正前において、実施例や実験データを明細書に補足することは許されませんでした。改正後においては、補足された実施例や実験データの審査を受けることはできますが、実施可能要件違反やサポート要件違反の拒絶理由に対して補足された実施例や実験データは、通常の場合、「補足実験データが証明する技術的効果は、当業者が特許出願の公開内容から得られるものでなければならない」という要求を満たすことができないため、依然として受け入れることができません。

例えば、審査官から実施可能要件違反の拒絶が指摘され、明細書に具体的な発明が記載されている一方、実験証拠が記載されていない場合、この発明は実験結果により証明されてこそ成立できます。審査官からこのような拒絶理由が指摘された場合、出願人は対応する実験データを補足提出し、その実験データが効果を証明することができても、その効果が出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面からは得られないため、審査官はこのような実験データを受け入れることができません。

特許のベースは「技術の開示と引き換えに法的保護を得ること」であるところ、出願人が出願日に技術を完全に開示していない場合に、後から実験データを補足提出したとしても、相応の法的保護を得られるべきではありません。そうでなければ、公衆の利益を侵害することになるからです。

以上の通り、今回の改正は審査基準における文言上の表現だけを直したもので、国際社会からの誤解は避けられるようになりましたが、審査の原則が変わったわけではありません。このような審査原則は国際慣例にも合致します。アメリカでは、補足実験データが証明する技術的効果は、出願当初の出願書類に「根拠」があることが要求され、ヨーロッパでも、その証明する技術的効果が元の出願に暗示的に含まれ、または元の出願書類に記載された効果と関連することが要求されます。