1)はじめに今回の改正は、無効審判について、主に無効審判段階における①特許書類の訂正要件を拡大、②請求人の理由追加や証拠補充の関連規定を調整の2つがポイントです。 2)改正点①について従来、特許権者は無効審判段階で請求項の削除、請求項の合併および技術案の削除の3つの方法により、特許請求の範囲を訂正できました。

今回の改正では、「請求項の合併」を「請求項のさらなる限定」に置き換え、また、「明らかな誤りの訂正」という訂正方式を追加しています。

上記「請求項のさらなる限定」とは、請求項にその他の請求項に記載されている1つまたは複数の構成要件を追加して保護範囲を減縮することをいいます。

【無効審判段階の訂正方式】つまり、無効審判段階における特許請求の範囲に対する訂正が改正前より緩和されました。下記の例をご参照ください。

請求項1:A+B 請求項2:A+B+C+D 請求項3:A+B+E 改正前は、無効審判段階で特許権者が請求項1を放棄して、独立請求項をA+B+CまたはA+B+Dに訂正することは認められませんでしたが、現在は、これらの訂正は全て認められます。同様にA+B+C+EやA+B+D+Eとすることも認められます。

改正前に認められた訂正方式は、請求項の削除、請求項の合併、技術案の削除でした。改正後は、請求項の削除、請求項のさらなる限定、技術案の削除、明らかな誤りの訂正となりました。請求項のさらなる限定は特許法第33条の要件を満たす必要があります。また、明らかな誤りの訂正を除き、請求項ではなく明細書又は図面だけに記載された特徴を請求項に追加することは認められません。

3)改正点②について公平性を保つために、無効審判を請求された特許権者が「請求項のさらなる限定」あるいは「明らかな誤りの訂正」を行う場合、復審委員会(審判部に相当)の指定期間内に、審判請求人は訂正内容に対して無効理由を追加して説明することができます。

具体的に、前記請求項1~3を例にして説明します。新請求項1:A+B+Cを得るように特許権者が請求項2の特徴Cを請求項1に追加訂正すると、請求人が追加できる無効理由は、新請求項1についての訂正要件違反やサポート要件違反があります。

一方、前記訂正後の新請求項1:A+B+Cについて、請求人が「特徴Cの用語が明確ではない」という無効理由を追加することは認められません。これは特徴Cの用語が今回の訂正内容ではないからであり、特徴Cの用語に無効理由がある場合、請求人は無効審判請求時にその旨を申し立てなければなりません。

請求人の証拠補充の点について、特許権者が請求項を訂正した場合であっても、原則的に、請求人は無効審判請求日から1カ月経過すると証拠補充ができなくなります。しかし、請求人は証拠の組み合わせを調整することができ、公知常識(技術常識)の証拠を補充することもできます。その原因は、下記3の点にあります。

1)無効段階で特許権者により行われた訂正が特許請求の範囲に存在しない構成要件を導入することはなく、つまり請求人の予想できない発明が生じないこと 2)特許権者の訂正後における、請求人による証拠の突然提示を防止すること 3)無効手続きの不当延長を避けること、すなわち、特許権者の訂正後に請求人の証拠補充を許した場合には、特許権者が補充証拠に対して請求項を再度訂正できてしまうところ、このような繰り返しによる無効手続き期間の長期化を防ぐこと上記により、特許請求の範囲の役割が以前よりも重要になります。出願人は出願書類を準備する際に、なるべく多くの構成要件を従属請求項に記入するほうが良いと思います。このようにすれば、後続の無効手続きに多くの訂正の余地を残すことができます。