●事件番号:(2017)京行終2660号 ●控訴人(原審原告): D.H.A. SIAMWALLA LTD.(以下、SIAMWALLA社という) ●被控訴人(原審被告): 中国商標評審委員会(以下、TRABという) 【事件の概要】 2006年11月28日に、天津の文房具会社の法定代表者張氏は係争商標の登録出願を行った。その出願番号は5750776号である。その指定商品は16類の鉛筆削り器、消しゴム、鉛筆、書写材料、絵画材料などであった。2009年7月13日に、商標局はこの商標を初歩査定し、公告した。

2009年10月16日に、タイの有名な文房具会社SIAMWALLA社は、係争商標の登録出願がその「MASTERART+獅子図形+徽章図形+外枠」という図案(以下、本件作品という)の先行著作権を侵害した旨で上記係争商標に対し異議申立を行った。

係争商標(第5750776号) SIAMWALLA社の本件作品

2011年10月17日に商標局は係争商標の登録を認めた。SIAMWALLA社は不服として同年の11月29日にTRAB(日本の審判部に相当)に再審請求を行った。2013年12月23日にTRABは係争商標の登録を認める旨の裁定を行った。

SIAMWALLA社は不服として北京市第一中級裁判所に提訴したが、一審でSIAMWALLA社の訴訟請求が支持されておらず、2017年5月19日に北京市高等裁判所に控訴を行った。【争点】 SIAMWALLA社が係争商標に対して先行著作権を有するかどうかが本件の争点となる。【終審裁判所の判断】北京高等裁判所の判断は下記のとおりである。

本件作品は、中国著作権法により保護された美術作品となる。SIAMWALLA社の本件作品の著作権の登録時間は係争商標の出願日より遅い。しかし、SIAMWALLA社は1999年、2002年にタイで登録された商標登録証および中国会社との文房具商品の注文書などを提出しており、これらの証拠により、係争商標の出願日前に本件作品の創作がすでに完了・公表されたことを証明することができる。係争商標は本件作品と比べれば、外枠を除いて、英文字の書体、獅子図形、徽章およびレイアウトが完全に同じであり、本件作品と実質的に類似している。よって、係争商標の登録はSIAMWALLA社の本件作品の先行著作権を侵害する。【最終判決】一審の判決およびTRABの再審裁定を取り下げると判決し、TRABに再審裁定を改めて作成するように命じた。

【コメント】本事件により、商標出願人は商標登録出願をした後に、他人が先行著作権でこの登録商標に対抗する場合、証拠を組み合わせて提出するとき、相手が著作権を有するかどうか、および著作権の取得時間を考慮する必要がある。

著作権の取得時間が係争商標の出願日より前であれば、商標出願人は係争商標が自分で独立に創作して完成したものであることを証明するための証拠を提供する必要がある。よって、商標出願人は商標の設計が完成した後に、設計原稿およびその他の関連証拠を保存し、早期に著作権登録を行うことも有効であると思われる。【関連条文】商標の権利付与・権利確定に係わる行政案件審理の若干問題に関する最高裁の規定 (19条) 当事者は係争商標がその先行著作権を侵害したと主張する場合、裁判所は著作権法などの関連規定により、主張される客体が著作物を構成しているか、当事者が著作権者或いはその他の著作権を主張する権利を有する利害関係人であるか、及び係争商標が著作権に対する侵害を構成しているかなどを審査しなければならない。

商標標章が著作権法から保護される著作物を構成する場合、当事者が提供した商標標章関連の設計原稿、原本、権利取得の契約、係争商標の出願日前の著作権登記証書などは、いずれも著作権の帰属を証明できる初歩的証拠とすることができる。商標公告や商標登録証などは、商標出願人が商標標章の著作権を主張できる利害関係人であると確認するための初歩的証拠とすることができる。

図 1:商標による先行著作権の侵害の判例速報 ----D.H.A. SIAMWALLA LTD. VS TRAB
図 1:商標による先行著作権の侵害の判例速報 ----D.H.A. SIAMWALLA LTD. VS TRAB