当社の欧州クライアントA社の従業員だったBは、在職中に取得したA社の営業秘密を、離職後に契約に違反して中国企業C 社に提供しました。A社は中国で営業秘密を保護することができるのか、元従業員B に対してA社はどのような措置をとることができるのか、ご教示ください。

1. 適用法律・救済ルート中国では、営業秘密は知的財産権の一つとして保護されます。民法、刑事法、不正競争防止法、契約法などの法律および最高裁判所の司法解釈に営業秘密に関する条文が設けられています。

営業秘密が侵害された場合、行政手続き、民事訴訟および刑事訴訟の三つの救済ルートがあります。

権利者(本件におけるA社)は状況に応じて、上記救済ルートの一つまたは複数を利用することができます。

2.立証について「不正競争民事事件の審理における法律適用に関する若干問題についての最高裁判所の解釈」の 14 条によれば、権利者側は自分の保有する営業秘密が法的要件を満たすことに加え、相手方(本件の元・従業員B)の情報が権利者の営業秘密(実質的に同一なものも含む)を不当な手段で侵害(取得)したことも証明する必要があり、欧州などの規定と比べて、営業秘密侵害案件の立証は難しくなっています。

一方、2019年4月23日に施行された改正不正競争防止法では、新設の32条により権利者の立証負担が軽減されました。

32条によれば、営業秘密侵害の民事裁判手続きにおいては、営業秘密の権利者が初歩的な証拠を提供し、自らが主張する営業秘密について秘密保持措置を講じていることを証明し、かつ、営業秘密が侵害されたことを適正に証明した場合、権利者が主張する営業秘密が本法に定める営業秘密に該当しないことの証明は相手方が行わなければなりません。

さらに、営業秘密の権利者が侵害を合理的に示す初歩的な証拠を提出し、次のいずれかの証拠も提出した場合、侵害を疑われる相手方は、自らに営業秘密の侵害行為がないことを証明しなければなりません。

(1)相手方に営業秘密を獲得するルートまたは機会があり、かつ、相手方の使用する情報が当該営業秘密と実質的に同じであることを示す証拠 (2)営業秘密が相手方により開示、使用されたか、または開示、使用されるリスクがあることを示す証拠 (3)営業秘密が相手方に侵害されたことを示したその他の証拠今回の改正で、営業秘密の権利者の立証義務が大幅に低減されており、営業秘密侵害の民事裁判手続きにおける立証責任の転換が明確化されました。

3.権利行使のためのアドバイス本件のA社は権利行使の準備にあたり、まず、冒頭で紹介した規定に基づいて営業秘密該当性を確認し、それから関連証拠資料を収集するとよいでしょう。初歩的な証拠を集めてから、証拠資料の収集状況に応じて、行政手続きまたは民事訴訟をすることを検討してください。

もし、相手方による営業秘密の漏洩がクライアントに重大な損失をもたらしたことを示す証拠があれば、中国の公安局へ通報し、または自ら刑事訴訟を提起することもできます。

さらに、中国外での権利行使も可能であれば、欧州等の外国での提訴や、または中国と外国の両方で権利行使を行うことも考慮してよいでしょう。