1.改正の背景
科学技術、とりわけヒト胚性幹細胞に関する研究が発展しているなか、ヒト胚性幹細胞技術の特許保護のニーズが徐々に増加しています。しかし、中国の旧特許審査基準(以下、旧審査基準)の規定は厳しく、現在の当該技術研究所に係る倫理規定と整合性がとれていませんでした。
中国におけるヒト胚性幹細胞研究の倫理規定「ヒト胚性幹細胞研究倫理指導原則」は、その研究に対して 14日間の時間制限が設けられています。具体的には、「体外受精、体細胞核移植、クローン技術、もしくはゲノム編集によって得られる胞胚について、その体外培養期間が受精または核移植から14日間を超えてはならない」という規定です。
つまり、この規定に基づいて、ある程度の胚性幹細一方、旧審査基準において、「ヒト胚性幹細胞およびその作製方法はいずれも特許法5条1項に規定された不特許事由に該当する」とされました。これにより、一部の研究成果は特許を受けられないことになります。
2.改正前後の対比
審査基準の規定によれば、ヒトの生殖細胞や受精卵、胚胎および個体を含め、各形成・発育段階にある人体は、いずれも特許法5条1項に規定された不特許事由に該当します。特許法5条1項の規定により、法律、社会道徳に反し、または、公共利益を妨害する発明創造は特許を受けることができません。形成・発育段階にある人体の工業または商業目的での利用は社会道徳に反するものに該当します。旧審査基準では、胚性幹細胞の発明について、形成・発育段階にある人体に当たり、特許法5条1項に規定された不特許事由に該当するとされていました。
今回の改正において、「胚性幹細胞は各形成と発育段階にある人体に属しない」ことが明確化され、「ヒト胚性幹細胞およびその作製方法は特許法5条 1項に規定された不特許事由に属する」との記載が削除されました。これにより、胚性幹細胞に関する発明の特許出願は、少なくとも「形成と発育段階にある人体に属する」との理由では拒絶されないようになりました。これは、主題から胚性幹細胞に対する制限を緩和したことになります。
3.胚性幹細胞の特許適格性の判断
全ての胚性幹細胞が特許の主題となりうるのではありません。改正後の審査基準においても、ヒト胚胎の工業または商業目的での利用に係る発明は社会道徳に違反したものとして特許を受けることができないと認定されています。ただ「体内での発育を経ていない受精14日以内のヒト胚胎から分離または獲得された幹細胞」を利用する発明については、社会道徳に違反することを理由に特許権の付与を拒絶することができないとの除外規定が追加されました。原則」と一致し、14日以内に制限されています。
なお、「ヒト胚胎の工業または商業目的での利用」について、体内での発育を経ているものであり、または受精14日を超えるものであれば、やはり社会道徳に違反することを理由に特許を受けることができませんので、ご注意ください。


