新薬開発を奨励するため、2021年6月1日から施行された中国特許法では、医薬品関連特許の特許権存続期間補償制度と医薬品特許紛争の早期解決メカニズムが示されている。医薬品の特許権存続期間限補償制度は、中国国内の医薬品の革新を促進するだけでなく、国外の新薬ができるだけ早く中国国内市場で上市する(市場に出ること)ことも奨励する。医薬品特許紛争の早期解決メカニズムは特許権紛争をタイムリーに解決し、特許権者の合法的権益を保証し、後発医薬品の上市後の市場撤退リスクをできるだけ避けることができる。以下、この2 つの制度を簡単に紹介する。

Ⅰ.特許権存続期間補償制度

特許法42条3項の規定によれば、新薬の上市承認審査にかかった時間を補償するために、中国で上市許可が得られた新薬に関連する特許について、中国特許庁(CNIPA)は、特許権者の請求に応じて特許権存続期間の補償を与える。補償期間は5年を超えず、新薬上市承認後の特許権の合計存続期間は14年を超えないものとされる。

2021年6月1日施行の特許法に関し、改正後の中国特許法実施細則はまだ公布されていないが、中国特許法実施細則(意見募集稿)の関連規定によれば、特許権存続期間の補償を請求する特許権の残存の保護期間が6カ月を下回ってはならないとされる。また、特許権存続期間の補償を請求する場合、特許権者は医薬品の上市が承認されてから3カ月以内に中国特許庁に提出しなければならない。

上記中国特許法実施細則(意見募集稿)の関連規定によれば、医薬品関連特許の特許権存続期間の補償期間の計算方法は、医薬品の上市が承認された日から特許出願日を差し引き、さらに5年を差し引くものとされる。中国特許法42条3項の規定と組み合わせて、上記計算方法によって算出された補償期間は5年を超えず、医薬品の上市が承認された後の特許権の合計存続期間は14年を超えないものとされる。 Ⅱ.医薬品関連発明の特許紛争の早期解決メカニズム中国特許法76条に下記の内容が規定されている。

「医薬品の上市承認審査において、医薬品上市許可申請者と関連特許権者又は利害関係者は、登録申請された医薬品に係る特許権について紛争が生じた場合、関連当事者は裁判所に提訴し、登録出願された医薬品の関連技術案が他人の医薬品特許権の保護範囲に含まれているかどうかを判決するよう請求することができる。国務院医薬品監督管理部門は規定された期限内に、裁判所による発効した判決により、関連医薬品の上市許可を一時中止するかどうかの決定を下すことができる。

医薬品上市許可申請者と関連特許権者又は利害関係者は、登録申請された医薬品に係る特許権紛争について、国務院特許行政部門に行政裁決を請求することもできる。

国務院医薬品監督管理部門は国務院特許行政部門 (すなわち、中国特許庁)と共同して、医薬品の上市承認と医薬品上市許可申請段階の特許権紛争解決の具体的な弁法を制定し、国務院に報告して承認を得てから施行する」。

これを踏まえ、2021年7月4日、国家医薬品監督管理局、中国特許庁は医特許紛争早期解決メカニズム実施弁法(試行)(以下は「本弁法」という)が公布され、同日より施行された。本弁法では、医薬品特許権者の合法的権益を保護し、新薬の研究を奨励し、高水準の後発医薬品の発展を促進するために、医薬品特許紛争の早期解決メカニズムを確立することが明確に言及された。

本弁法によると、国家医薬品監督管理局は,医薬品上市許可保有者が中国国内で上市した医薬品関連特許情報を登録するための中国上市医薬品特許情報登録プラットフォーム(以下、プラットフォームともいう)を構築し、医薬品上市許可所有者は医薬品登録証明書を取得した 30日以内に特許情報をプラットフォームに登録する。プラットフォームに関連特許情報が登録されていない場合、本弁法は適用されない。

後発医薬品の申請者が医薬品上市許可申請を提出する際、先発医薬品に関連する特許ごとに声明を出し、先発医薬品に関連する特許権者又は利害関係者が上記後発医薬品の申請者の特許声明に異議がある場合、訴訟を提起し、または中国特許庁に裁決を求めることができる。

上記声明は次の4種類に分けられる。

第1類声明は、プラットフォームに後発医薬品の基となる先発医薬品の関連特許情報がないこと。

第2類声明は、プラットフォームに収録された先発医薬品の関連特許権が既に終了し、若しくは無効され、または後発医薬品の申請者が既に関連特許の実施許諾を取得していること。

第3類声明は、プラットフォームに先発医薬品の関連特許が収録されている。後発医薬品の申請者が上記関連特許の存続期間が満了する前に申請した後発医薬品を上市しないことを承諾すること。

第4類声明は、プラットフォームに収録された先発医薬品の関連特許権が無効されるべきであるか、またはその後発医薬品が上記関連特許権の保護範囲に含まれていないこと。

第1類声明および第2類声明については、先発医薬品の関連特許権が存在しなく、または後発医薬品の申請者が既に関連特許の実施許諾を取得しているため、後発医薬品登録申請の審査・許可は特許の影響を受けない。

第3類声明については、先発医薬品の関連特許があるが、後発医薬品の申請者に上記関連特許の存続期間が満了する前に製品を上市しないことが承諾され、権利者との間に論争は生じない。

第4類声明については、後発医薬品の申請者は関連特許権が無効され、または後発医薬品が関連特許権の保護範囲に含まれていないと主張するとともに、先発医薬品の関連特許の存続期間が満了する前に後発医薬品を生産・販売することを要求するものであり、当事者間における特許紛争を構成する可能性が高い。したがって,本弁法が主に解決するのは第4類声明に対する異議であると考えられる。

本弁法は現段階ですべての医薬品関連特許紛争を早期に解決することはできないが、「プラットフォーム」の発展に伴い、中国の後発医薬品開発過程における特許紛争を解決するためにますます重要な役割を果たすだろう。