「放棄(disclaimer)型の補正」とは、その名の通り、請求項の中でいくつかの技術的特徴を排除する補正方式であり、通常、否定的な技術的特徴を用いて特許請求の範囲を限定する。例えば、「……を含まない」、「……を含有しない」、「……を排除する」などである。
現行の特許法及びその関連規定においては、特許審査基準第2部第8章5.2.3節の特許法33条に対する審査指導において、許可されない削除の一つとして放棄型の補正が説明されているのみである。ここから、特許審査過程において放棄型の補正は通常、許可されない補正であることがわかる。
審査基準に具体的に下記のように規定されている。
出願当初の明細書および特許請求の範囲において、ある特徴の当初の数値範囲のほかの中間数値が記載されていなかった場合に、引用文献で公開された内容により発明の新規性や進歩性に影響を受けたり、当該特徴において当初の数値範囲のある部分については発明が実施できないことに鑑み、出願人が「放棄する」方式を採用し、前述した当初の数値範囲から当該部分を排除しようとする場合がある。保護を請求する発明の中の数値範囲を、全体から見ると、明らかに当該部分を含まないようにした場合、このような補正は、出願当初の明細書および特許請求の範囲に記載された範囲を超えるため許可されない。ただし、出願当初の記載内容に基づき、当該特徴において放棄された数値を選んだときには同発明が実施できなくなる場合や、当該特徴から「放棄」後の数値を選択することにより同発明に新規性と進歩性を有すると証明できる場合には、補正は認められる。
上記の状況を説明するために、審査基準において次のようなの具体例が示されている。たとえば、保護を請求する発明において、ある数値範囲がX1= 600~10000で、引用文献に記載された数値範囲がX2=240~1500であったとする。X 1とX2が部分的に重なっているため、当該請求項に係る発明は新規性を有しない。このとき、出願人は「放棄する」方式を採用して、X1のうちのX2 と重なった部分である600~1500を排除して、請求項における当該数値範囲をX1>1500 からX1=10000に補正するものとする。もし出願人が当初の記載内容と従来技術に基づき、同発明がX1>1500からX1=10000の数値範囲が、引用文献で公開されたX2=240~1500に対して進歩性を有することを証明できず、また、X1に600~1500を取った場合には同発明が実施できないことを証明できない場合、このような補正は許可されない。
なお、審査基準における上記規定は、数値範囲についての放棄型の補正の場合のみを説明しているが、実務において、放棄型の補正は数値範囲の排除に限定されるものではなく、すべての排除式の限定が放棄型の補正に属するものではなく、請求項の保護範囲から元の出願書類に開示されていない技術的特徴が除外された場合に限られている。たとえば、審査基準の上記規定に記載されているように、出願当初の明細書および特許請求の範囲において、ある特徴の当初の数値範囲のほかの中間数値が記載されていない場合などである。
放棄型の補正は、許可されない補正の1つとして補正要件(特許法33条)の制限を厳しく受けるが、上記審査基準の規定と実務をあわせたとき、以下の場合には放棄型の補正が許可されると考えられている。
1.引用文献が抵触出願である場合
2.引用文献が、出願の属する技術的分野、解決した技術的課題、発明構想とかなり異なる引用文献である場合
3.出願人が、出願当初の明細書および特許請求の範囲に基づいて、放棄された技術案が実施不可能であることを証明し、または放棄後の技術案が従来技術に対して新規性及び進歩性を有する場合上記「1.」と「2.」の場合について、出願人が特許出願当時に、抵触出願や技術分野がかなり異なる分野で開示された技術的情報を知ることができなかったことを考慮し、これらの実際に開示された技術的情報に基づいて出願人に合理的な保護範囲を与えるため、出願人は元の出願書類に開示されていない技術的特徴を具体的な「放棄」の形で排除することが許される。
「3.」の場合、上記の「実施不可能」と「新規性と進歩性」とを元の出願書類の内容と従来技術の証拠とから証明する必要があり、これは出願人自身が作成した出願書類の内容を否定することに相当するため、実務的には、このような放棄型の補正の成功可能性は低い。
以上により、現在の「放棄型の補正」の許可は、基本的に上記の新規性を克服するための補正に限られ、進歩性を克服するための補正は許可されにくい。



