中国において、発明の進歩性とは、先行技術と比べて、この発明が突出した実質的な特徴と顕著な進歩を有することを指します。発明の進歩性の審査において、審査官は、一般的に、請求項に係る発明の進歩性を判断するため、つぎの3つのステップを用います。
すなわち、 (1)最も近い先行技術を特定し、 (2)発明の相違点と発明が実際に解決しようとする技術的課題とを特定し、 (3)保護を求める発明が当業者にとって自明であるかどうかを判断するという3つのステップです。
進歩性に関する審査対応について、実務における対応経験を以下にまとめました。
1つ目に注意すべき点は拒絶理由が不合理である可能性です。
拒絶理由を最初に読むときは、まず拒絶理由が正しいかどうかを判断する必要があります。実務的には、引用文献を用いて本発明の請求項1の技術的特徴に対応して一々比較するなど、拒絶理由が詳細に記載されていることがありますが、その一方で、引用文献1の明細書の◯◯段落~◯◯段落に本発明の請求項1の技術的特徴が開示されている、とだけ指摘されるなど、拒絶理由が大まかにしか記載されていないこともあります。いずれの拒絶理由に対しても、一語一語、一文一文を分析し、本願発明と引用文献の分析を組み合わせて(ここでの組み合わせは技術案に加えて、解決しようとする技術的課題及び実現した有益な効果もあります)、拒絶理由が正しいかどうかを判断します。拒絶理由が不合理であると判明した場合には、意見書により反論を行い、根拠をもって審査官を合理的に説得します。
2つ目に注意すべき点は、拒絶理由における先行技術の組合せが不適切である可能性です。
進歩性の判断は一般的に2つ以上の引用文献の組合せにより行われますが、1つの引用文献だけを使用する場合には、一般的に公知常識(技術常識に相当)と組み合わせて判断されます。表面的には、拒絶理由は合理的であるように思われることが多いです。すなわち、本発明と引用文献1との間の相違点を見つけ、この相違点に基づいて解決しようとする技術的課題を見つけ、次に、引用文献2に技術的示唆を見つけて組み合わせます。しかしながら、実際には、拒絶理由では、2つの引用文献の組合せをより合理的にするために、その相違点が引用文献2において果たす役割を、本発明と引用文献1との間の相違点が解決しようとする技術的課題と同等にする場合があります。このような場合、本発明と引用文献をよく読み、本発明と引用文献の発明構想 (inventive concept)を整理し、本発明が解決しようとする技術的課題と実際に解決できる技術的課題がそれぞれ何であるかを確定する必要があります。これにより、本発明と引用文献1との間の相違点が解決しようとする技術的課題は、その相違点が引用文献 2において果たす役割であるかどうかを判断することができます。このような前提に基づいて、2つの引用文献の組合せが自明であるかどうかを判断します。
3つ目に注意すべき点は、異なる角度から進歩性の反論を行うべき点です。
本発明の独立請求項に係る発明がすでに突出した実質的な特徴と顕著な進歩を有し、この独立請求項に対して補正を行う必要もないと考えているならば、この時に主張された意見が本当にそのような説得力をもつかを確認する必要があります。単純に非自明性を反論するだけでは、本発明に係る発明点が公知常識であるというシンプルな拒絶理由のように説得力が足りません。例えば、明細書の実施例の部分をよく読み、実施例の部分に一般的に効果データまたは情報が記載されている場合には、その効果データまたは情報によって審査官を説得することができます。特に化学分野の特許出願においては、出願人に対比試験データの補足提出を提案することを促すことで、本発明の突出した実質的な特徴と顕著な進歩を証明することができます。
以上のように、拒絶理由において進歩性の問題が指摘される場合、それは必ずしも請求項が進歩性を有していないわけではないが、出願人が提供した反論理由では審査官が発明を十分に理解できるほどの説得力がない場合、反論が認められない可能性があります。したがって、進歩性の拒絶理由が指摘される場合、まず、本発明の発明構想を明らかにし、引用文献の発明構想を分析し、本発明の独立請求項が引用文献と区別できる発明構想をカバーしているかどうかを判断し、カバーすることができなければ、本発明の発明構想と引用文献の発明構想との区別に基づいて請求項を適応的に補正します。本発明の独立請求項が、引用文献と区別できる発明構想をカバーしていれば、請求項を補正することなく、審査官を説得するために、上記の3 つの点に注意して合理的に根拠のある反論を行うことができます。


