2025年11月10日に、中国特許庁(CNIPA)は特許審査基準改正に関する決定を発表した。改正後の特許審査基準は2026年1月1日から施行される。本稿では、出願人と密接に関連する改正内容について簡潔に説明する。
1.発明者の身分と出願人情報の真実性 (改正後の規定)
・発明者は自然人でなければならない。願書に組織、集団または人工知能を発明者として記載することは明確に禁止される。
・発明者の情報は真実かつ完全である。発明者全員の身分情報を記載し、その真実性を確保することが求められる。
・代理機関の確認義務:特許代理機関は出願人の身分情報と連絡先を確認する義務を負う。
(注意)
改正前の規定では、通常は筆頭発明者の身分情報のみ提供する必要があった。しかし、今回の改正後、特許出願の願書には発明者全員の身分情報を記載しなければならない。また、人工知能や組織を発明者名として記載することが明確に禁止される。
2.同一出願人による同日の特実出願の処理手続きの明確化 (改正後の規定)
・出願時に、同一の発明創造について特許出願と実用新案出願を提出したことをそれぞれ明記する必要がある。つまり、発明と実用新案の両方の願書に同日出願を明記する必要があります。
・発明特許出願が特許付与の要件を満たす場合、審査官は、権利付与された実用新案権を放棄する旨を声明するように通知する。放棄を声明した後に、発明特許が権利化され、CNIPAは実用新案権が放棄されたことを公告する。
・出願人が実用新案権の放棄に同意しない場合、発明特許出願は拒絶される。審査官が発送した上記通知に対して出願人が応答しなかった場合、当該発明特許出願は取下げられたものとみなされる。
(注意)
今回の改正前は、同一出願人が同じ発明創造について同日に発明特許と実用新案の両方を出願した場合、出願人が発明の請求項を登録された実用新案の内容と異なるように補正することで、実用新案権を維持したまま発明特許を取得することが可能であった。今回の改正後は、上記のような対応方法は認められなくなる。
3.分割出願における優先権の声明義務 (改正後の規定)
分割出願の親出願が優先権を有している場合、分割出願の願書において当該優先権を主張する旨を声明していなければ、分割出願は優先権を主張していないものとみなされる。
(現行規定との比較)
現行規定では、分割出願における優先権の主張については特に定められていません。本改正はこの点を補完するものである。
4.人工知能、ビッグデータ等のアルゴリズム特徴またはビジネスルール・方法特徴を含む関連発明の審査基準の明確化 (改正後の規定)
(1)審査基準の充実「必要に応じて明細書の内容について審査を行うべき」という要求を追加し、審査をより全面的に行うことが強調された。
(2)合法性審査の根拠を新設特許法5条1項に基づく審査の具体的規定が明確に追加された。具体的には、特許出願が関わるデータ収集、ラベル管理、ルール設定などの内容が法律・社会公徳に反する、または公共利益を妨害する場合、特許権を付与できないと規定されている。
(3)審査事例の調整と拡充・新規追加事例特許法5条に関する複数の事例が追加される。例えば、「ビッグデータに基づくデパート内マットレス販売支援システム」は、違法な顔情報収集の疑いで法律違反とされる。「無人運転車両の緊急時意思決定モデル」は、歩行者の性別・年齢に基づき衝突対象を選択するため、社会公徳に反するとされる。
・進歩性判断事例の拡充「船舶数の識別方法」や「廃鋼等級分類ニューラルネットワークモデル構築方法」などの事例が新規追加され、審査における進歩性判断において、アルゴリズム特徴が技術案にいかなる貢献をもたらすかの具体的な判断基準が明確化された。
・明細書作成要件の細分化人工知能等の技術に関する特許出願を対象として、明細書作成の要件が大幅に詳細化された。モデルに必要なモジュール、階層、接続関係、及び学習の具体的な手順とパラメータを記載することが明確に要求されている。また、アルゴリズムの応用については、特定分野との結びつき方、入出力データの設定及びその関連性を説明する必要があり、これにより技術案の十分な開示を確保する。
5.植物および動物関連発明の定義と保護範囲の明確化 (改正後の規定)
・植物品種の定義人工的な育成を介して、又は発見されて改良を介して、形態特徴及び生物学的特性が一貫して遺伝的性状が安定している植物集団をいう。
・野生植物の保護野生植物を人為的に選抜育種または改良した上で、産業上の利用価値を備えている場合、特許出願をすることで保護することができる。
・遺伝子組換え動植物「動物品種」または「植物品種」の範疇に属する場合、依然として特許権を付与できない。
(注意)
植物関連特許を出願する際は、それが人為的に選抜育種または改良を経ており、かつ一貫性と安定性を備えていることを説明する必要がある。遺伝子組換え技術が品種にのみ関わる場合は、植物新品種保護条例などの他の保護手段も検討することを提案する。
6.無効審判手続き (改正後の規定)
・一事不再理原則の強化現行の「同一の理由と証拠で再度無効審判請求を行う場合は、受理および審理しない」から、改正後は「同一または実質的に同一の理由で再度無効審判請求を行う場合は、受理しない」と強化された。
・無効審判請求の不受理事由を新設無効審判請求が請求人の真意に基づかない場合などが新たに不受理の対象に追加された。この改正により、「藁人形(ストローマン)」による無効審判請求の資格がある程度禁止されることとなる。
・補正書の提出規範全文差替えページ及び補正対照表の提出が必須となり、同一の無効手続きにおいて複数回補正書が提出された場合、規定に合致した最後に提出された補正書を有効とする。
今回の審査基準の改正により、審査の標準と手続きが最適化され、特にAIやビッグデータのような新興分野における具体的な審査規則が明確化された。これにより、特許出願及び審査プロセスが一層標準化され、発明創造に対し、より良く、より効率的な保護を提供することを目指しています。


