金稲KD-2331イ号製品とパナソニック社の意匠の正面図

【事件の概要】パナソニック株式会社(以下、パナソニック社という)は、2012年9月5日に名称が「美容器」の係争意匠権を取得した。権利付与公告番号は CN302065954Sである。

パナソニック社は、珠海金稲電器有限公司(以下、「金稲公司」という)が生産、販売、販売の申出をし、北京麗康富雅商貿有限公司(以下、「麗康公司」という)が販売した「金稲イオン蒸気美容器 KD-2331)」がその意匠権を侵害したとして、次のとおり判決するよう請求した。

二被告の侵害を差し止めること。係争侵害製品に関するすべての宣伝資料を廃棄し、係争侵害製品の宣伝内容を削除すること。金稲公司は係争鋳型と専用生産設備および係争侵害製品のすべての在庫を廃棄するとともに、販売店から未販売の係争侵害製品を回収して廃棄すること。金稲公司は経済的損失として300万人民元(約5千万円)を賠償し、二被告は共同で合理的な支出として20万人民元(約330万円)を賠償すること。【裁判所の判断】 <一審> 北京知的財産裁判所は一審で次のように判断した。

係争侵害製品の係争意匠に対する相違点は二者の全体的な視覚効果に実質的な影響を及ぼさず、二者は類似意匠に当たる。金稲公司はパナソニック社の承認を受けずに、係争侵害製品の製造、販売及び販売の申出を行なった。麗康公司はパナソニック社の承認を受けずに、係争侵害製品の販売及び販売の申出を行なった。既存の証拠により、金稲公司の係争侵害製品の販売、販売の申出による利益を証明できる。パナソニック社はインターネットに示される販売量と平均価格により、300 万人民元の賠償金額を請求しており、合理的な理由がある。また、パナソニック社は侵害行為の差し止めに合理的な支出をした。麗康公司は販売側として、本件訴訟を知りながら、侵害行為を停止しなかったため、訴訟中の支出部分について共同負担の責任を履行しなければならない。

したがって、第一審は次のように判決した。二被告は権利侵害行為を停止する。金稲公司は経済的損失として300万人民元を賠償する。金稲公司、麗康公司は連帯して合理的支出として20万人民元を賠償する。金稲公司、麗康公司はこの第一審判決を不服とし、控訴した。

<二審> (事件番号:北京市高等人民法院(2016)京民終245号) 北京市高等裁判所は二審で次のように判断した。

係争侵害製品が係争意匠権の保護範囲に含まれる。賠償金額については、パナソニック社が公証機関による証拠収集により、一部の電子商取引プラットフォームで検索した結果、規格が侵害製品と同一の製品の販売総台数は 18,411,347 台で、平均価格は 260 元であることが分かった。これを賠償請求の根拠とする。上記係争侵害製品の販売総台数に平均価格を掛けて、1台あたりの侵害製品の合理的利益を低く設定したとしても、算出した結果は300万元をはるかに上回る。上記証拠を根拠に、パナソニック社が主張した300万元の賠償金額は高い合理性がある。第一審裁判所がパナソニック社による経済的損失の賠償請求を全額支持したのは、事実と法的根拠がある。したがって、控訴を却下し、第一審判決を維持する。【判決の意義】第二審の判決はさらに、専利(※1)民事権利侵害事件における侵害収益証拠の審査認定法則を明確にした。これは類似事件の判断に対しても一定の指導的な意義がある。第二審の判決は次のように判断した。

専利権侵害の損害挙証が難しく、専利権侵害行為に関する帳簿、資料は主に侵害者に保有されていることを考慮して、権利者がその挙証能力範囲内で侵害者の収益状況を十分に証明し、かつその請求した経済的損失金額の合理性を十分に説明しているが、侵害者が反対の証拠で権利者の賠償請求を覆せない場合、裁判所は、権利者の主張と提示された証拠で、侵害者の権利侵害による収益を認定することができる。

(※1)専利は、特許、実用新案、意匠を含む。ソース:http://www.chinacourt.org/article/detail/2017/04/id/2822668.shtml

図 1:「美容器」意匠権侵害事件、パナソニック社が300万元の賠償金を取得
図 1:「美容器」意匠権侵害事件、パナソニック社が300万元の賠償金を取得